即席詩の集い
宣井龍人

<ある夜に>
安らぎとは無関係な温かい鎖が静止の糸を引く
生煮えの記憶が歌いずるずる亀裂が揺れる
左耳から右耳へ爆音が通り闇は大きく息を吐く

<鳩が一羽>
鳩が四つ角に立ち止まって動かない
近寄っても不安そうに動かない
どうしたの?ここは車が危ないよ
思わず鳩に声かけした
見上げた顔は親にはぐれた幼児だった

<鳩の行方>
争いに傷付いた鳩たちは
空の香りを打ち消すと
抜けた羽根を焼き捨てて
鉛色の水晶に沈んでいく

<シ>
そのピアノはシしか鳴らない
鍵盤を叩く度に生き血をすすって赤らむ

<君>
やっと逢えたときに君はいない
いないという君にやっと逢える

<ばらばらとしんしん>
押し潰されたばらばらの押入
記憶はたちまち惨殺される
貴方の顔には過去が無い
感情だけは無造作に掃きだされ
亡者がしんしんと積み重なる


自由詩 即席詩の集い Copyright 宣井龍人 2021-04-11 20:59:11
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