sonnet
朧月夜

石垣に小さな花が咲いていました。
幼いわたしは傘を差し伸べて、可憐な花を守るのでした。
子供心は純粋で、
哀れという気持ちで、ただその花を見守りたく、

そして、傘の上に不意に見つけた蝸牛を乗せて、
ひたすら歩いていくわたしがいました。
「好き」という言葉の意味も分からず、
ただ生きとし生ける者が、不思議なもののようでした。

わたしたちはなぜ生きているのですか?
神も天も、そのことを教えてはくれません。
ただひたすら、答えは自分で見つけるしかないのです。

たとえ、美しいもののためにも、慈愛に満ちたもののためにも、
駆け足で生き抜けていく、他者と自己とがいました。
それでも問いには答えてくれない、神も天も。遠く、遠く、声にならない声は響くのでした。


自由詩 sonnet Copyright 朧月夜 2021-04-09 19:15:19
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