糸が切れた話
道草次郎

張り詰めた糸が
プチんと切れるみたいに
世界が落っこちた
落っこちた世界は
通りがかりの犬に食われてしまった
あぜん
ぼーぜん
ぼんやりしていると
小人がゾロゾロとやって来て
もう一度
丈夫そうな糸を張っていく
すると
世界はふたたび息を吹き返す
小人を一人つまんで
鼻先に持って来る
「おい、あの糸には何を使ってるんだ」
小人は震えながら答える
「あ、あれは古代鯨のヒ、ヒゲです」
小人を口に放り込み
バリバリ音を立てて食ってしまう
うーむ
まったく不条理な話だ
空も樹も土も花も
みんな
知らんぷりではないか
古代鯨のヒゲだって?
それにしても
ずいぶん
珍しいものを考えたものだナ


自由詩 糸が切れた話 Copyright 道草次郎 2021-04-07 20:30:24
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