プロフィトロル
妻咲邦香

対岸を見下ろす鳥居の見る夢は色も薄く
糸車の糸も尽きてからからと
何を忘れてもあなたを忘れない
何を守ってもあなただけは
傷付けたいもう一度

大木の根に腰を降ろし膝を抱える
親指にキリギリスの爪が触れる
いい人で終わりたくはない
そう言ってたのはあなたの方
幾つもの気持ちの変更線
戻れるなら何だってするよ

あの日を境に漕ぎ出した
私を許したあなたを許せないまま今も
起承転結「結(けつ)」がない

よく見抜いたね
甘いだけの日々に疲れた
先に言わせたかったんだきっと
冷めたベルガモットの酸味と
落とした視線が時を削る
ふたつ並べたプロフィトロル
情を詰める勇気がもう無いと笑う
会いたさに背を向けても、水面に浮草の漂う
手招きしながら包み込むように

あの日を境に漕ぎ出した
落とした滴がまた川となり
おぼろ月夜の慎ましやかなるも
起承転結「結(ゆい)」がない


自由詩 プロフィトロル Copyright 妻咲邦香 2021-04-05 00:07:31
notebook Home