プロフィトロル
妻咲邦香
対岸を見下ろす鳥居の見る夢は色も薄く
糸車の糸も尽きてからからと
何を忘れてもあなたを忘れない
何を守ってもあなただけは
傷付けたいもう一度
大木の根に腰を降ろし膝を抱える
親指にキリギリスの爪が触れる
いい人で終わりたくはない
そう言ってたのはあなたの方
幾つもの気持ちの変更線
戻れるなら何だってするよ
あの日を境に漕ぎ出した
私を許したあなたを許せないまま今も
起承転結「結(けつ)」がない
よく見抜いたね
甘いだけの日々に疲れた
先に言わせたかったんだきっと
冷めたベルガモットの酸味と
落とした視線が時を削る
ふたつ並べたプロフィトロル
情を詰める勇気がもう無いと笑う
会いたさに背を向けても、水面に浮草の漂う
手招きしながら包み込むように
あの日を境に漕ぎ出した
落とした滴がまた川となり
おぼろ月夜の慎ましやかなるも
起承転結「結(ゆい)」がない