持たされた
こたきひろし

その日持たされた母親の骨壺が熱くてビックリした
斎場から葬儀屋のバスに乗って実家に向かう途中
最前列の席にすわりながらじっとその熱さを我慢しながら
骨壺を両手で持ちながら胸に抱えていた

五月初旬だった
気温はそれなりに上昇していた
熱い骨壺に私の体温も上昇したのは書くまでもなかった
喪服を着た私は汗を書いていた

幼年から少年
少年から青年
青年から中年
中年から老年

に至るまで
私の母親に対する思いは熱量を欠いていた
母親にこれと言って愛情を感じる子供ではなかったのだ
たとえ母親とその子供と言う関係だからと言って
お互いの間に愛情が存在するとは限らない

だからと言って
何度拭いても拭き取れない
近親憎悪が存在したという事もなかった

つまりどこまでも無関心な存在でしかなかったのだ
なので母親の死にこれと言って特別な感慨はなく
ただただ
胸に抱えた骨壺が熱いと感じているに過ぎなかった


自由詩 持たされた Copyright こたきひろし 2021-04-04 08:51:57
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