沓掛の小道
妻咲邦香
本当は優しい言葉でもかけてあげたいけど
誰よりも覚めた、突き刺すような視線が痛い
テーブルを挟んで座る
手を付けないままのサラダとフォーク
言いたくないなら何も言わなくていい
どんな未来が欲しいか? どんな幸せをあげたいか?
まだ固まってないうちに、同じ人間なんだから
私も昔の自分を思い出そうとしてる
話せるうちに、話したい事、話しておこう
こうして言葉じゃなくていいから
沓掛の小道で小さな手を握り締めた
私たちは此処で生まれ、そして出会ってしまったんだから
何もかも終わらせてしまえたら簡単
でもそれが一番難しい
壊れないように壊さないように
育て上げる程に遠ざかっていくように見える
稲穂をかき分けて進む「あずさ」を指差して
今日はラッキーだと笑う
そう いつも助けてくれるのは何でもない事だった
この景色を忘れる時がいつか私にも訪れる
そしたら思い出させてくれるかな?
今と同じ笑顔で
お弁当箱に詰めるようにポンと渡してあげれたらいい
今日は寝坊したからちょっと手を抜いちゃった
あなたは怒ってくれるかな?
そしたら私も負けずに言い返すのに