沓掛の小道
妻咲邦香

本当は優しい言葉でもかけてあげたいけど
誰よりも覚めた、突き刺すような視線が痛い
テーブルを挟んで座る
手を付けないままのサラダとフォーク
言いたくないなら何も言わなくていい

どんな未来が欲しいか? どんな幸せをあげたいか?
まだ固まってないうちに、同じ人間なんだから
私も昔の自分を思い出そうとしてる
話せるうちに、話したい事、話しておこう
こうして言葉じゃなくていいから

沓掛の小道で小さな手を握り締めた
私たちは此処で生まれ、そして出会ってしまったんだから

何もかも終わらせてしまえたら簡単
でもそれが一番難しい
壊れないように壊さないように
育て上げる程に遠ざかっていくように見える
稲穂をかき分けて進む「あずさ」を指差して
今日はラッキーだと笑う
そう いつも助けてくれるのは何でもない事だった
この景色を忘れる時がいつか私にも訪れる
そしたら思い出させてくれるかな?
今と同じ笑顔で

お弁当箱に詰めるようにポンと渡してあげれたらいい
今日は寝坊したからちょっと手を抜いちゃった
あなたは怒ってくれるかな?
そしたら私も負けずに言い返すのに



自由詩 沓掛の小道 Copyright 妻咲邦香 2021-03-25 00:24:00
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