花
◇レキ
幼さは
蕾が花になることを知らない
蕾を一つ一つ摘み取って
分厚い本に挟む
毎日少しづつ色あせてゆく
蕾の押し花を
手に取り飽きもせず眺める
昼間のまどろみの中
手の力が抜けてゆき
蕾はぽたりと落ちた
※
花の夢を見る
時間が満ち満ちた頃
花は咲くのだ
手折り 花瓶に生ける
豊かに匂い立つ花は
しおれることを忘れたかのようだった
花は部屋の暗がりにくっきりと映えた
朝方 目が覚めて
寝転んだままの部屋の隅に
空の小さな花瓶
※
種を蒔いた
丁寧に世話をした
小さな草が生えた
水をやると陽射しに水滴は
希望のように反射し光った
蕾は出来なかった
夕方 枯れゆく草に
耽ったように水をやる