口ずさむ
水宮うみ
一度しか鳴ることのない音楽を一度だけの私達が聴いた。
正しさなんて知らないからそよ風みたいになんにも言えない帰り。
とうめいなストローをとおっていった 好きって遠目には透き通ってた。
ぼくの目がぼくの世界を変えていく 目に映らない目が此処にいる。
言葉にしてもいい事を知るたびに世界の解像度が上がってった。
かつて歩いていたひとりの居ることが分かる涙に滲んだ光。
数や字や音や形や動きやらのなんやかんやが、なんか楽しい。
どこまでも 床屋でも この言の葉も いつでもどこか孤独があった。
0みたいに真っ白なタマゴを0で割って、世界にヒビが入った。
水が空へ昇っていくの不思議だな 降ってくるのは一瞬だけど。
点滴が天敵だった 晴天の商店街に数滴の涙。
雨上がりの眩しい公園で宿題のプリントを思い出していた。
数直線上で「奇遇ですねー」つって笑い合ってる奇数と偶数。
受けとった言葉が視力になったこと 重りになって動けなかったこと。
風よりも透明な声だったから、きみの笑いは夕陽にとけた。
きみの目が輝いていて、美しい景色が見えてるのだと思う。
新しい文を書くのに目的はいらなくなって、カーテンあける。
手のなかの不安が少し温かい ひとりで歩く命と夕焼け。
とても綺麗な短い文をつくりたい そこから春が始まるような。
口ずさむようにその文を繰り返し思い出してる 短い歌だ。