淫雨
あらい
私の肩に架る琥珀色の雨が降り続いている
それをただ描かれた水面が凪いでいくように、と願い
果てまでも眺めている
透過するわたしと糖化するあなたの影が
一筋の蝋燭に反芻してここに点く
橙のかほり誰そ彼の思ひ出。祖は解かず 離れず
まあかに揺らめくと信じては誣いる、所詮吐露よな、済し崩しの世だ。
そこは何れ緋雨とある。
わかってはいるのだが まだ酔わせてくれ
応えを求めないまま 薄墨に紛れ、雫の如く伝う塒に仕舞う
屹度瞬きの程に白亜には悠いが似合う
歪む僻地は未だ薄ら寒い泥濘み、鬱蒼とした希望の丘陵までを膿む
陰雨はとめどなく我が庇を転がり落ちて、行先の川を溢れさせていた。
然し地肌はまるで変わらずしろがねを纏う
眦から零れた絖りを妨げ、越えられない境界線を創り出す。
なんとも癒えぬ絆の後よ
そう、母よ 姉よ 吾ら御霊よ。
これが箒星の欠片なのかもしれぬ。
悴む塊 鋭利なその奥の芯は 長い旅を終えて 魂動を解き放してなお
この手の中で僅か救ったのだ
探し充てた ような気はするのだが ただのいしころにすぎないのか
これは溜息や泪を描けば それもまた甘く虹色の星屑に成り下がる
胆略化された遺漏、磨かれた宝石と可愛らしくヤラしい被虐を誘い、
堕ちゆくまま
虚ろ瞼を拡げ 総て卑しめればいい。
つらも知らぬほど遠くわずかに温もりだけを遺して、
こらは捕らわれているのか、
私たちの脳裏に幽かに残り香と塚を釘憑ける
そのほどよい往来する未知、裁たれいく時の悼み傷痕、
酸いも甘ったるい
どの口にも含ませる。この天からいただいた 気が触れた あめ
→「総て潤わせて魅せるの、」
←「嘘を纏ったままで踊り明かせば。」
そのうち奢り高鳴るばかりの漣。
塗り固めたような心地 天に配色を施していて、
それほどに青天井。
くだらないと吐き捨てても 排出されたツチクレは
どうにも代わり映えがしないのよ
だけど程よい小春のように調べばかりは粛々と花を咲かせ
みみっちいだけの私から、あなたへとうつり変わる
実りの秋。
きっと幾度も とつきとうかが過ぎようとしていて。
一閃の微睡み永遠に酔い 野垂れ死ぬまま愛で生ければと思い込む
コウノトリたちの泪を酌む。
けれど今でもどうあってもそぐわない気がして居ても立っても織られぬ、
ほつれた翼を棄てこの足でこの腕で掻き潰してきた
己自身を鏡うつしてしまえば、
やはりミダグナシ、
戻りたくもない、
ウツロギな襤褸に身を寄せてしまったのだと、
つくづく
このキタナラシイ亙り。
巣立つのをこころゆくまで愛玩しているだけなのか
まったく遺伝子のやらかした事案に理屈をつけたがる
私たちの言い分とは所詮
泣いてしまう者、
まだ見ぬモノ、
待ち望むだけのいま ときのもの。
いずれ晴れ渡る、信じいればそれだけ
盃に注ぐ 酒で満たされ零れた愚痴を舐めとる
そんな日もあってどうせ流れ去る
そのいつかのことを常々憂いては抱き留めている。天は
はじめから渇ききっていて 仮に 捜し当てても已むことは ない
奇しくも