ひとでなし
墨晶

         - Der Traum, wieder


一瞬で、どんな夢だったのか忘れてしまうが

胸が潰れるような氣持ちのさなか目覺める

かたちのないもの

かんがえにならなかったもの

ことばにならなかったもの

いつもそれらにわかれを云えなかったことは

もうこれまで多く、大切だったものを

とうになくしてしまっている筈なのに

わたしにとって大事なものがまた

それが何だったのかを氣付かせないように

わたしの元を立ち去って行ったかのようで

ひたすら悔いとなって

身勝手な痛みのようにしばらく心肺に取り憑く

だからいつも寢牀ねどこ

半身を起こしたまま放心している
 
 


自由詩 ひとでなし Copyright 墨晶 2021-03-15 19:58:08
notebook Home 戻る
この文書は以下の文書グループに登録されています。
閒奏曲集