ついーと小詩集4
道草次郎

「海をすてた」

海をすてた
いっぱいだったから
外に捨てた
外は広いから
海はしずくにみえた
にんげんが
外にいったら
ちいさすぎて
なんだかバカみたいだ
だからぼくは
ここにいることにする
ここってつまり
中のこと
中はなんだか
心が休まるんだよね


「歩行」

ふとした事がきっかけで
歩き出すものがある
僕は暫く機械になっていよう
潤滑油、知りませんか?

歩き方から学ばなくても
たぶん途切れとぎれの存在で
僕は道に貢献して行きます
信号機、夜はどうですか?


「三びきの仔犬」

三びきの仔犬がカメラに向かって走って来る
コロコロしている
とても可愛い
この可愛さを伝える術は詩にあるんだろうか
映像やイラストや音源によらず
それを伝えるにはどうすればいいのか
ぼくにはそれができそうにない
そのことが
途轍もなくかなしい


「鈍感な者が詩を書く」

吉野弘さんがどこかで
もっとも鈍感な者が詩を書くと言っていた
15の時はふーんと思ったが
いまは身にしむよ
その時見た吉野さんの近影
まるで近所のおじさんみたいだった
歯、抜けてた
『神曲』についての試論みたいなものは読み飛ばしたけど
吉野さんみたいな詩人
やっぱり
居ないとすこし寂しいな


自由詩 ついーと小詩集4 Copyright 道草次郎 2021-03-14 11:36:42
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