忘れじの
a i
忘れじの、なんのその。
今日も、愛すべき君への歌を詠う。
酔っぱらいのほうが、人生の花見坂はあるきやすいのだ。
尊き君に歌を詠う。
欲の渇望と権力への吐き気。
まるでなにかを産みだす余興かのようだった。
愛して呉れた人よ。刹那の時間よ。
君が遺してくれた言葉を。
あの日から、刹那の時間を繰り返している。
たとい、長きに渡る付き合いであろうとも、血の繋がった家族であろうとも、どこか人間との絆が希薄であるように感じる。
*
追いかけた残像。初めから偶像。
なにかを型取った模型でしかない、心が、心だけが、切なげに蠢いている。
刹那の出会いは、切ない別れであったか。忘れじの、忘れられない人の世の。
また別の形で出会えたら。それだけを祈っている。
「人間の世で悼みを知り、嘆いた」
それは、なにより人間である証だった。止まない痛み。消えない残像。どこかで君の命-言葉-が蠢いている。新たな生命を宿すかのようだった。君は風邪を引いて、僕は発狂した。それが、別れと、新たな生命との代償だった。出会って受け取れば、それだけ別れれば引き千切られるよう。運命は僕らを斬り裂くようだけれど、幽霊なら痛くもかゆくもない。もちろん、僕らはただの人間だけれど。疲れたような目と心で見つめている。もう眠いみたいだ。おやすみね。