空席
妻咲邦香
私の中に降る雨は
永遠に枯れることを覚えず
汚したものは数知れず
許したものは僅かなれど
愛してしまうのだろうか?
私も人となって
愛していくのだろうか?
春の訪れるに任せ
私の足に触れる土は
それでも潤いを求め続け
席がひとつ空いている
貴方が来るのを待っている
恋していただろうか?
私も人となって
恋していくのだろうか?
静かに微かに燃え盛りながら
その日空から降りてきた
雪は何を見ていたか?
問い続ける言葉も今は
乗る風を今かと待っている
知ってしまったのだろうか?
私も人となって
知っていくのだろうか?
忘れるより少し早い足取りで
花さえない空席
その脇をすり抜けて