空席
妻咲邦香

私の中に降る雨は
永遠に枯れることを覚えず
汚したものは数知れず
許したものは僅かなれど
愛してしまうのだろうか?
私も人となって
愛していくのだろうか?
春の訪れるに任せ

私の足に触れる土は
それでも潤いを求め続け
席がひとつ空いている
貴方が来るのを待っている
恋していただろうか?
私も人となって
恋していくのだろうか?
静かに微かに燃え盛りながら

その日空から降りてきた
雪は何を見ていたか?
問い続ける言葉も今は
乗る風を今かと待っている
知ってしまったのだろうか?
私も人となって
知っていくのだろうか?
忘れるより少し早い足取りで
花さえない空席
その脇をすり抜けて


自由詩 空席 Copyright 妻咲邦香 2021-03-11 09:59:36
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