お地蔵様お地蔵様
日々野いずる

元気におなりください、って何回も言ってるお母さんの影にかくれてじっと、屋台の光を見ていたの。お地蔵様の赤いべべが汚れてしまって、お供えしたポッキーが雨の日に溶けて、わたしは蟻の道から欠片をとりあげて、またお供えした。溶け出したチョコはもとに戻らなかった。そしてこの前ここに来たのはずっとまえで、そして、大人になっても忘れないという約束を忘れてしまった君みたいな薄情者がいたってことが、あった。忘れたのはわたしで君は思い出してないだけ。雨上がり。屋台のカステラをお土産にしてお母さんは家に帰っていった。鼻歌。お地蔵様の赤いべべは新しくて、わたしは古い赤いワンピースだった。かっぱらったりんご飴を食べて、水たまりのむこうにみえる泥を踏み散らす遊びは楽しかった。まま。まま。かみさま。わたしは元気。まま。


自由詩 お地蔵様お地蔵様 Copyright 日々野いずる 2021-03-08 09:46:00
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