青い鳥のように
塔野夏子
無感覚の壁がある
その壁をとおれない感覚が
たえず壁際に降りつもる
無感覚の壁は
何を守っているのだろう
世界から自分を
自分から世界を
あるいは
自分から自分を
君の声がきこえる
青い鳥のように歌う君の声がきこえる
それは無感覚の壁をこえてくるの
それとも
無感覚の壁にどこかすきまがあるの
たえず壁際に降りつもる感覚は
壁のむこう それとも こちら
自分がいるのは
壁の外 それとも 内
壁に手をふれれば
とたんに
身体に流れ込んでくるノイズ ノイズ ノイズ
(バビロンまでは何マイル
アヴァロンまでは何マイル)
耐えかねて手を離せば
またきこえてくる君の声
青い鳥のように歌う君の声
その声の中を舞う花鳥風月
無感覚の壁は
誰が築いたのだろう
自分が あるいは世界が
世界の中の自分の中の世界
自分の中の世界の中の自分
自分はここに居ていいの
壁をこえる
それとも
壁を壊さなくてはいけないの
(バビロンまでは何マイル
アヴァロンまでは何マイル)
ノイズ ノイズ ノイズ
の 記憶の中に埋もれてゆく感覚たち
が たえず壁際に降りつもり
君の声がきこえる
青い鳥のように歌う君の声がきこえる
その声の中を巡る森羅万象
この耳はその歌を
きくことを許されているの
誰に問いかければいいの
君はどこに居るの
わからない
けれど
君の声がきこえる
青い鳥のように歌う君の声がきこえる