ロングバケーション
末下りょう


生まれつき
泥じゃなく砂をかためたふたりのからだは穏やかな波にさらわれ
いつしか跡形もなく
消えて
しまって
から

さらさらふたりきりで 小さな
肌のかけら
となり

青い水のさなか
一粒一粒
浮き沈みして

一時も
乾くことなく
きめこまやかさのなかでまた抱きしめ合うことを
夢見ている
. ..

こじんまりした釣り船の ラジオから聞こえたハロー

砂の城に
内緒で埋めたふたりの 黄色く透けた石も
穏やかな波に溶けて
ビールみたいに
泡立ち

この星の揺りかごに
還った


ちょうどこどもたちの遊ぶ声が聞こえる時間帯に うたた寝をするようになった日々のなかで


すっかりふたりをわすれたやさしい記憶のために


自由詩 ロングバケーション Copyright 末下りょう 2021-03-06 12:28:44
notebook Home