私(たち)は今日もねじれている
月夜乃海花

私が高校生の時
それが君を知ったはじめての機会
他の人とは違う3次元MVに
エネルギッシュな語彙が流れるドラムンベース
独り誰にも知られずに何十回、何百回聞いていた

私が大人になった時
インターネットの波で知り合った
初めて話して、世界が違うと感じた
その結晶が崩れて新たに造られる世界に
いつしか憧れを抱いていた

そして君と会った時
あまりにもスタイリッシュで整った顔で
きっと、会ってはいけない人だと感じた
普通に生活してたら会えないのに、と
それでも逢えた縁を誇りに思った

君は言った
「こんな子初めてだよ、面白い」
ただその言葉が嬉しかった
「だけど君には軸がない」
同時に結晶が破裂するような言葉が刺さった
「創作者が賞賛されるのはその人が亡くなった時だけだ」
私の頭を撫でながら言う君の言葉がまるで
かつて自分自身の言った台詞と被って血が流れた

私と君はねじれている
君は最近何も造らない
自分には才能が無いと言いながら
ぼーっと、煙草を吸ってエスプレッソを飲んで
睡眠薬を噛み砕いている

私は創っても満足できずに
作品を頭の中から消してしまって
何も無いようかのようにに過ごしていた
「だってこんな作品が作りたいんじゃない!」
叫んでも誰にも届かない、誰にも聞こえない

君はどこにいる?
私はここにいる。
けれど、交差することのない感情
互いに笑顔でも心の奥底では
切っ先を向け合っているのだろう

ねじれの位置
私はここに居たよ
どんなに移動しても君には届かない
どんなに走っても泣いても
君は私を忘れるだろう

そして最後に思い出した。
私が本当に追いかけていたものは
君ではなく、ただその才能だけで
君そのものを受け入れてる訳ではなかった

そうか、ねじれているのは私だけだったのか。
私はこれから独りで歩いていく。
多次元の道を。
また面白い人に逢えることを願って。


自由詩 私(たち)は今日もねじれている Copyright 月夜乃海花 2021-02-26 17:41:35
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