さよならが来ないうちに
こたきひろし

ガソリンスタンドの先の路地を入ると
そこは一方通行路
いつもクルマで走る
路地の両側には所狭しと民家が軒先並べてるけど
途中右側に小さな産院の駐車場と建物がある
そこは助手席に座っている嫁さんが二人の娘を産んだ産婦人科だ

もちろん二人とも俺の子供に間違いないと
ひたすら信じてる
だって彼女は俺の初めての女
彼女にとって俺が初めての男だったかについては
多いに疑問符付くけど


産院の前を過ぎると間もなく左側に洒落た建物の歯科医院がある
そこは以前夫婦が一緒通った歯医者だった
何の感慨もなく通り過ぎると右側に質店がある
その店には過去に一度だけ入った

結婚指輪を質に入れて流してしまった店だ
感慨深く通り過ぎるとその先で
普通の道にぶつかる

辺りは決まって夕暮れの時刻
普通の道は坂道になっている
クルマは右側へとのぼる予定だが
いつも左右安全確認する為に停止していると
必ずと言っていいくらい不安な気持ちに襲われるのだ
その先でクルマ事
二人分の人生が終わったりしないかと

二人分の人生が終わったりしないかと


自由詩 さよならが来ないうちに Copyright こたきひろし 2021-02-23 05:35:22
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