白川夜船
あらい
まわる。
螺旋のていでモビールのさまで、
回帰する 転落してしまう。
そして
あゝ崩れ去る
(万華鏡の儀 彼岸花の葬)
なだれ込まれたら 受け止めきれない
張りぼての壁面に無造作に焼き付いた
未完彩《ミカンイロ》の滲みは点在し 気のせいではないけれど、
あたり障りなく仄かに紛れ込み 暖かく湿っている
漆喰の凹凸のように、肌膚《はだえ》に馴染んでいきました。
私が透けていくさまを知ら占めたのは、もうずっと
過去の事でしたか。それとも先の話でしょうか
それは恐ろしくはない。だけど好きでもなかった。
まあるいたまごに罅が、
やや舌を出し入れする。
おちゃまな虚飾 ひとつもなく、
ふくよかな手も 弾むような触りをしていて、だから
ゆらがなくても あたたかく思えました。
時々仔猫がするように 甘噛みし、ないてみせても なにひとつ
かわらないその唄に安堵を数え、指折り憶えていきました。
今を思えば、なんて
嘘かもしれない、
けれど訝しんだりはしません。だって侘しかったのですから。
誰もいない何も無い新月の褥で待ちくたびれお眠りと
しまわれるまま、天使たちは極偶に灰の雪を降ろしてゆくだけです。
それはそれは彼の人にうつくしい羽根のひとときだけ
授けてくださいましたが、
ときはただ静粛に地に足を下ろすことも天に手が架かることもなく。
(浮世を繋ぐ霹靂)
そう凭れかかるのは私なのか
迫ってきた死期でしかないのかもわかりませんが、
覗き込まれた息吹と蒼波の陽は眩しいばかりの光明でした。