フレア
妻咲邦香

プラットホームの屋根の隙間
名も知らない雛鳥が鳴いている
長い道程が必要だったのだ
空に取り囲まれて逃げ出せない自由が
やっと探し当てた引き込み線
ちょうどいい大きさの枕木を並べる
冒険したい分だけ並べる

目覚めない薬を振りかけられて
愛し方も忘れた
冷たい石の塔に繋がれたまま
私は私の素顔も知らない

走り出した時間の客車
最後尾から飛び降りたら
私は私の閃光を捨てる
太陽がそうするようにと命ずるままに
私もちょうどいい枕木が欲しかったのだ

またいつか会えたら
今度はきっと捕まえる
また夢を見させてくれたら
今度は絶対離さない
届いてしまった瞬間から
過去は終わってしまうから
フレア、私は呼びかけるよ
この声が礎となって
いつか何処かで失くしてしまうまで
フレア
暁の眩しさに目が眩んでも
貴方は貴方を愛し続けて
そして生きて


自由詩 フレア Copyright 妻咲邦香 2021-02-21 00:54:24
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