無垢と復讐
ひだかたけし
開けた窓から雨の匂いが流れ込み
濡れていく遠い森のざわめき始めて
貴女の声は透明な水底に沈んでいく
ああ、
こんなに澄んで囁き交わす時ばかりなら
詩を書くことすら要らないだろうに
僕はそこに微かな私怨を差し入れ
復讐したつもりで言葉を綴る
むしろ詩は一つの復讐なのだ
束の間垂直に立つ永劫の時への
この限られた肉体への繋縛、
終わりも始まりもない世界に
私たちが始まり終わることの
無垢無能な抗いのための抗い
開けた窓から雨の匂いが流れ込み
濡れていく遠い森のざわめき始めて
貴女の声は何処までも透明な木霊を響かせ