病室の虹
やまうちあつし

病室で虹を見た
手術を終えた父親と
年老いた母親と一緒に
三人兄弟の次男だから
私が彼らのすべてではない
ましてや今では
孫たちもたくさんいる
けれど私も
彼らの一ページであることに
違いはなかろう
午前中のあいだ
激しく降り続けた雨が上がり
午後一番に現れた虹
病室の小さな窓では
はみだしてしまいそうで
思わず言葉を交わす
何十年も一緒にいながら
虹について話すなど
初めてのことかも知れない
生活のことや仕事のことで
精一杯だった
これまで
いくつの虹を
見たことがありますか
これから
いくつの虹を
一緒に見れますか
そんな質問を飲み込む
尋ねてみても
詮方無いことだから


自由詩 病室の虹 Copyright やまうちあつし 2021-02-18 14:57:33
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