スノウグローブ
末下りょう
手にしたとたん重くなるスノウグローブを覚えていて
なにかを覚えていることを思いださせてくれる風景にわたしがよみがえる
木製の土台に細工されたオルゴールは壊れていて 少しの揺れでまきあがる銀のラメがいまも綺麗で
冬の森の鹿のようで判然としない動物たちのミニチュアが
倒れたり逆さまになった透明なガラス玉のなかの世界
なにもしなくていい冬に 石炭にかじりつくように暖炉に群がったわたしたちに紛れて 冬のよそ者が持ち込んだガラクタ
雪にかくした骨をなくして光の坂をころげながら交じりあった人
ぼくたちはずっと嘘つきなんだと言った あの冬の種族
永遠だけが永遠にこない部屋の
雪泥棒