そういえばキミはバイキンマンが好きだったよね
そらの珊瑚
幾重にも重なったチャコールグレーの雲模様
ハッヒフヘホー
バイキンマンが登場する定型場面みたいな
重すぎて緞帳になれなかった布地みたいな
そんな今朝の空を額縁にかける
やがて大粒の雨
屋根で踊る小人の楽隊
にぎやかなしづけさを打つ音符
それも一時のこと
録画しておいた映画を見終わる頃には止んでいた
天気予報通りになぞられた冬の終わりの
何でもない日の
何でもないこと
日常とともに季節はあり
季節とともに日常はある
日常がいつか失われても
季節はきっと素知らぬふりで続くだろう
犬が散歩の途中で
しつこく草の匂いをかいで
昨日の自分を取り戻すように
風の匂いを
くぐる
かいでみる
始まったばかりの宇宙の片隅で
微かにかびくさい土塊のような
春の匂いよ 生きてふたたび
何でもないことを重ねては 触れてかぐ