マンボウになろうと思う
道草次郎
子供時分の話だが
湾岸戦争とノストラダムスが怖かった
半泣きでミサイルが飛んで来ないか親に聞いたら
親は鏡台の上のブラシの横に髪留めを置き
中東と日本がいかに地理的に離れた場所にあるかを説明してくれた
世紀末特集では大槻教授が頑張っていたが
やっぱり途中でみるのが怖くなってそっと立ち上がると
暗い廊下でじっと時が経つのを待った
そんな子供だった
そうなんだ
そうだったんだよ
自分はそういう人間だったんだなあと考えると色々な事に得心が行く
なんだか気付くのがえらく遅いけれどまあ仕方があるまい
過ぎてしまった歳月は空の果てか海の底か
兎に角どっかへぶっ飛んでしまった
ぼくはこれからたぶん
自分が溺れない海のマンボウになると思う