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かとり

どこにでも車を停められたらいいのにだいたいいつも都合良くはいかない。
心に留まった場所を通り過ぎてから、写真の構図を探すことになる。
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  はじめは岩礁の方へ行きたかったけど逆方向へ向かった。
  入り組んだ海岸沿い、ごつごつした岩混じりのゆるやかな道を登った。
  見知らぬ土地の植物は皆どこか奇妙に見えた。
  空も、海も白っぽかった。岩礁も白くてなんだか格好がよかった。
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    何も知らない。
    方角もわからない。
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      白と黒とコバルトブルー。
      コバルトブルーの木。とても鮮やかな。
      白は雪のよう。
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風景は幾何学的な図形の集合であり、少しの体の動きや光の変化で、
図形の性質や、図形と図形との関係性は大きく変わることになる。
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  よく思い出せないし、写真も残ってない。
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    たぶん太平洋沿い。近畿地方南部。
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      何も知らなかったし方角もわからなかった。
      撮影の目的といえるものもなかった。
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      波は泡だっていた。その場所、その角度から、泡は少し汚く見えた。
      もう少し近づきたいという、思いを量って、細い枝の植物群に分け入った。
      枝は白っぽかったが、細いということは黒いということ。これもまた邪魔だった。
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        枝が目の前から離れない。
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          邪魔だった枝のことばかり思いだす。
          枝にもっと注目すべきだったのかもしれない。
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          砂の上に疎らに芽のようなものが出ていた。
          枝にはトゲトゲとした実が多数くっついていた。
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            海か川か、どこか流れの傍を歩いていた。
            角の丸い岩の上に立って、岩の合間の流れを注視していた。海藻が揺れていた。
            私はやはり岩礁の方へ行ったのだろうか。それともこれは別の場所の記憶だろうか。
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              白い枝、黒い枝、
              塩水の底の影。
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                パルナッソス山へ。
                コバルトブルーの木。とても鮮やかな。
                白は雪のよう。
                黄色い影が、足元を流れていく。
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        影が長く伸びていた。
        影が長く伸びていたということは光が強かったということだ。
        風景はことさら白っぽい印象を与えるものではなかったのかもしれない。
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          あなたの笑い顔。
          あなたは岩場に立って、
          緑の服を着ていた。
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自由詩 picture Copyright かとり 2021-02-08 00:57:24
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