曖昧な正解と確かな不正解
こたきひろし

私って
良い人ですか?それともきわめてワルイ人
そんな質問
誰かにしてみたくなった

その日
たまたま入ったファミレスは空席が目立っていた
ランチタイムと夜の混雑する時間帯ではなかったとぼんやりと覚えている
昼か夜かさえはっきりしないくらい曖昧な記憶だった

国道沿いにあった店だったと思う
店の外はいちだんと雨脚がはやくなっていたんじゃないかな
彼女を助手席にずっとドライブしてきたら急に降り出してきた雨だったんじゃなかったかな

席は窓際にしたと思うよ
雨の景色眺めながら食事するの好きだったから
すわって間もなく冷たい水がふたつ運ばれてきた
店内は閑散としてたからさ 

女性の店員は美人でスカートから魅力的な脚が出てた
そんなところはちゃんと覚えているんだよな
 お決まりになりましたら呼び鈴鳴らしてください
店員が言ったから
すかさず私は頼んだ とりあえずジンジャエールとビールを冷えたグラスにひとつ持ってきてくれない
かしこまりましたと言って店員はテーブルから離れていった

一刻もはやく彼女から理性を奪わなくてはならない
彼女が今日着ていたものはいつもと違ってた 短いスカートに上はかなりろしつ気味だ
彼女はきっと私に仕掛けてきているに違いなかった
その罠に嵌まらない訳にはいかないからさ

私は以前高校時代のクラスメートから聞いていた
彼に彼女が出来て付き合っていたらその内に相手からサインを出されたらしい
のに躊躇してしまいその日は綺麗に別れたら 即刻振られてしまったと

私もたしかにオクテの純情青年だったけれどさ 彼女をそんな風にして失いたくはなかったんだ
だからさその日はきわめてワルイ男になろうとしたんだよ

だけどその先のプライバシーはヒミツにするよ
ヒミツにさせて貰うから


自由詩 曖昧な正解と確かな不正解 Copyright こたきひろし 2021-02-07 07:19:19
notebook Home