風を待つ
服部 剛
仕事を終えた電車の中で
ついポケットから取り出すスマホの画面に
誰かからメッセージはないかと、探す
家に着いて
ポストの蓋を開けては
誰かから便りはないかと、探す
忘れた頃に届く
心のこもった手紙を
両手で受け取りながらも
日々に追われ
壁にかけた
暦
(
こよみ
)
は知らぬ間に…
捲
(
めく
)
れゆく
――私は一体、何を待つ?
生涯にたった一度あるような
淡い恋文
ずっと色褪せない
友情の絆
または
明日の道をそっと照らす、知恵の言葉
幸いを探して虚空を
弄
(
まさぐ
)
る
寂しい手よ
待つことの秘儀を、私は知りたい
音の無い夜の部屋に
身を沈め
そっと目を閉じて
透きとおる感性のアンテナを立てる
自分という
器
(
うつわ
)
を、空っぽにして
自由詩
風を待つ
Copyright
服部 剛
2021-02-02 18:32:51
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