退屈な水
草野大悟2

やさしさだけがあるひとのなかに
太陽(コロナ)がおちて
夕焼けがおわった。

冬の空より退屈なひとね
水がいった。
そういう水も
そうとうに退屈なかおをしていて
おおきなあくびをしている。

あくびが 
ぽわん ぽわん 
かすかな音をのこしながら
ちいさな虹をえがいていく。
虹のなかで
うまれたばかりの言葉が
えーんえん えーんえん
からだをふるわせて
泣いている。

おおきなあくび と ちいさな言葉が
らせんの風となって
退屈な水のうまれた空へと昇っていく。

でも
ただひとり
きみ
という言葉だけは
どこにも飛ばずに
私の手のひらで羽をうごかしつづけている。


自由詩 退屈な水 Copyright 草野大悟2 2021-02-01 09:50:54
notebook Home