彷徨短歌10首
道草次郎
打ち震え他山の石となりてあり銀漢闇に渦巻くさなかに
撃ち砕く蒼空の独房ふるさとの浅葱色なる苫屋にありて
この詩をば貶むまいとアトラスの巨躯を跨ぎし我ぞ悲しき
真鍮の都のような心持ち背戸のなま風血潮めく春
彷徨える黒猫空に彫琢し静脈をゆくエディアカラ群
音のなき世界に慟哭ありてなお黒き小枝の宙を掴むる
辛辣のモカ珈琲遥かなり盧生の夢に垂らす生乳
死地を往く眼のなき魚に鐵の脚白杖たよりにかかる浄土へ
燃あがる思念の冥き焔にて黒をくわえんユピテル赤斑
海底の異常な迄の扼腕に懐かれ後世の蝌蚪となりたし