変針
大村 浩一

だしぬけに
一枚羽根が吹き飛び
鳥は少しバランスを崩した
何喰わぬ顔で引き起こしながら
無限には飛べないことに
今更ながら気づいた

強い北風
空は底抜けの好天
その果てに
まだ見ぬ大陸があった

知る限りの行程を瞬時に組み立て
彼ははじめての事のように
自分の意志で翼を動かしてみた
身体が応えて
空中でするりと進路を変えた
あまりにあからさまで
いささか鼻白んだが
これで敵意は誰にも知れたので
はじめからそうだったふりで
悠々と飛び始めた



「日詩」2021/1/24 大村浩一
※末尾は旧作「ネウストラシムイ」から部分引用


自由詩 変針 Copyright 大村 浩一 2021-01-27 23:33:05
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