恋人たちってみんなどこか苦しそう
viraj
あの時あの場所で起こった幻のようなはかない僕たちの物語は、
秋の落ち葉のようで、時に暴君の仮面のようでもあった。
はかなく、指の間から滑り落ちていく雫が見せるつかの間の美しさ。
走馬灯のように、君が蘇った。
魂に刻み付けられた古よりの記憶が蘇り、
距離が幻想であることを告げる。
一瞬君とともに見た天国の記憶が忘れられずに、
それを探してばかり。
天国の至福。
それは君と過ごした永遠というはかない時のこと。
すべての黒魔術師が第三次世界大戦で破れたあと、
それを救済する白魔術師の姿が霊視された。
きっと、君は、いまもここにいるんだね。
いつも同じ場所に帰ってくる。
あの時を越えた今、ここに。
純白の空間にただ一人、自分だけが取り残されて、
それが不思議に寂しさやネガティヴさから解き放たれていて、
ただ、一夜の夢のように、すべてがしられていて。
しらないように見えて、すべてをしっていて。
愛に狂った二人を、冷めた目で見る化石のような老人は、
人生におけるはかない絶頂と、叡智との対決のようであった。
私は老いている。
私の魂は老いている。
愛の百戦錬磨の指。
彼女の膣を痙攣させるあの技巧。
振り乱された髪とともに、夜の戦いに疲れて見える細い腕。
愛は自由だ。
自由こそが愛のエセンスである。
笑いながら敵を殺害したクリシュナ。
はちきれんばかりの乳房とともに人生を謳歌する遊女。
人生の五月の緑を、やはり、あの老賢者はすべてみきっていた。
みんなどこか恋人たちは苦しそうだね。