きみと朝食
津煙保存




水色の盥にすっぽり尻を入れた
部屋の真ん中でじっと
踏ん張り
捻り出す
すっぽんぽんのうんち
きみは二十歳を越えた若き主
ぼくはキッチンより
半開きの扉)背中)を見た
汚れなき無言)パンク)幸あれ

 熱いフライパンの上の卵のじゅーじゅー
 リクエストのハムエッグが焼き上がる頃

清きあぐら坊は笑う
ぎゃはは
ぎゃはははは
昨夜のM-1見ている
激しくヘッドバンディング
それは(ナチュラル)ハイな
きっと(金髪)だから

先輩ともどもうんちを持ち出し
便器へ目掛け一息に
木の箆で振り落として見せた
 オー グッドアイデア
耳元で讃えられた
二人(祝のような)一歩を

仰向けの裸ん坊は
見開く天井の下
今朝はシーツにくるまる
山の凸凹であった
いつまでも
ぐにゃぐにゃ
ぐにゅぐにゅ
であった
その股にトランクスを
その細長き両脚にブルーのジーンズを 
その白桃の掌からチェックの赤いコットンシャツを通し
その踵に靴下を
この床の上
ぎゃははは)ころんと仕上がる


オーブンを開き
食パンを乗せ

メーカーより注ぎ淹れたストレート
テーブルの上のカップ
ぎこちない
きみの
若い手が運ぶ

カーペットの上
テレビの前

ほやほやの
ハムエッグかじり

カリカリ
砕かれていくトースト
カーテン
先輩
つくりたて)の皿)の味



 午前10時
 ワンルームマンションの薄暗い部屋から
 冷たい息を吸い込む1階の廊下の端
 ドアの横に待つ
 極太の黒いバッテリーコードを外した
 緑を点す車椅子が
 下るスロープの先から国道沿いを北へ
 角の郵便局できみは
 光熱費を支払う 

 きみの好きなバンドにあの娘のこと
 肩越しに話しながら横断歩道を渡り切り
 地下鉄のエレベーターより
 改札口を通り抜け
 誰のものでもない朝
 ぼくたちは
 鋼鉄の扉を打ち震わせ
 足跡のようにたどる陽の中を
 まばゆくおちていくのだ
 




自由詩 きみと朝食 Copyright 津煙保存 2021-01-18 19:03:05
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