雪と阿片
平井容子
いつか死んでほしい人のための家路ほど
悲しいものもない雪夜でした
窓のあかりとうなるボイラ
湯をあびるひとの気配
耳なりのむこうのやわこい声
わたしは悪党だったから
全身が指先みたいにかじかんで
笑えてしかたがなかったな
あまりにも白っぽいから
そこが夜のそこだと気づかんうちに
みんな眠ってしまうのでしょう
くしくしと
ふみしめ粉雪をかためて
ゆめへとおりていく
ひとりゆくみなそら、
かつてわだかまったものの
むねのうちゆきよ
自由詩
雪と阿片
Copyright
平井容子
2021-01-16 00:39:44
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