ギター
由比良 倖
あやされて育った。雲の切れ間から赤い赤い血が滴る。
ヒロイックな風儀に巻かれないでください。
遊泳する中でも、これ、この指は本物です。
操るのでなく、触る、目を瞑る、と
この指先が、世界の中心です。
心が裸になるリズムの中に、骨を浮かべて、
君は色を着けて、
私の中心に触れて。
君が流れる街を見下ろす。街はミニチュアになり、
見上げると君は立っている、手を
こちらに伸ばしている、笑っていて、
どこまでも君だけが続いていけばいい、
透明な地球を上っていく横断歩道みたいに、
靴を落としながら、解けながら、存在だけは凛として、
相乗りしていく、宇宙船のような、丸い雛型を、
星の果てまで、天を、晴らせながら。
どこまでも私は、私の音をここから
届けるから。