芳香
ひだかたけし
俺は朝から何も食べていない、
ひたすら吐き気の塊だった
静けさに沈む
何もない
静けさに沈む
足場を欠く
俺の肉体と意識は解離したまま、
冬陽の芳香を嗅いでいた
それは明るむ白い空間の
凝縮した息遣いだ
静けさに沈む
何もない
静けさに沈む
足場を欠く
震動を感じる
静けさに包まれ
高揚を聴取する
静けさに含まれ
虹色に横滑る夜が、
抱き合いながら始まっていく
止められる者は誰もいない
狂うことの恐怖を、
オマエが平然と受け容れるなら
平衡を保つ意志を、
オマエが平然と発揮するなら
夜は深まっていく
夜は静まっていく
夜は律動していく