アフリカ大陸は残してもらう、他
道草次郎
「アフリカ大陸は残してもらう」
金に困って
地球は質にいれた
おやじにどうしてもと頼み
アフリカ大陸だけは
手元に残してもらった
帰ってすぐ
如雨露で水をやる
サバンナに
雨季の到来だ
待ってましたと
ヌーの大群の川渡り
楊枝の頭で
のろまなヤツのけつをつつく
ライオン親子は長らく
餌にありつけていないらしい
そう言えばと思いだし
たまの食べ残しを
パラパラ落としてやる
あ、いけない
取材クルーの車だ
やつらに知れたら面倒だな
ええい構うものか
言うが早いか
アフリカ大陸を逆さにして
ごびりついたもの全部
ゴミ箱にはらってしまう
長テーブルに
やけにさっぱりした
アフリカ大陸を置いてみる
さあもう一度はじめからだ
まあいいさ
猿モドキは失敗だった
次はどうなるかな
じつに楽しみだ
「書物釣り」
さて
今日は『白鯨』にしよう
釣り糸を垂らす…
まずは船の帆に
ルアーが引っかかる
ちぇっ
幸先が悪いったらないな
よし
釣竿に勢いをつけることだ
えい
おっとこんどは
イシュメルの鼻に
引っかかったようだ
やっこさん仰け反ってる
それにしても
えらい憤慨ぶりだな
いやいやこっちの狙いは
もっと大物
そう、モビー・ディックだ
そらこれでどうだ
お、引きがいいぞ
グングンくる
よーしよーしそのまま
いちにのさん!えいっ
あ、あれ?
デカいにはデカいがこりゃ魚だ
おっかしいなあ
あ、いけねえ
『白鯨』じゃなかった
うっかり
『旧約聖書』で釣りしてたんだ
てことは
まずいなあさっきの帆は
ノアの方舟で
鼻引っ掛けちまったのは
うーん
もしや、アダム?
「死のおそろしさ」
パパがねているから
種をまいた
パパの耳からにょきにょきと
もみの木が生えて
梢で梟が鳴いた
ママもねてるから
ボタンを押した
ママの後頭部が開き
なかから小人が手を振ったので
ぼくもふり返した
チビも足元でねてる
丸まったチビを包むように
魔法陣をかいた
チビの耳は大きくなって
大きな化け猫になった
お月さんも眠っていた
裏返してみた
すると月の裏には
宇宙人の基地があった
じつはぼくも眠ってる
夢の中では
なんだってできるから
もう何十年も
こうしてるのさ
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