今、何してる
番田 

昔渋谷の学校に通っていた頃、雨が降っていた時があった。その時に見上げた歩道橋の風景を、僕は今でも時々思い出すことがある。僕は西東京の学校に通っていた頃もあったが、街自体としては渋谷の方が思い出深い場所だった。思い出深いというか、通っていた学校の中よりもそこで目にしたことのある、いろいろな風景の方が良く思い出されるのである。たとえばHMVで目にしたことのあるランキング表。中古下着ショップの中の、どこか退廃的で懐かしい商品たち。僕は、夜、渋谷で働いていたこともある。渋谷から代官山へ抜ける夜道は、どこか物寂しい、高速道路の料金所のような静けさがあった。クラブでは見知らぬ女の子に声をかけられた。あの子は今、どうしているのだろうか‥。多くは、僕は一人だったような気がする。でも、多くの人にとっても地元の町ではないのだから、仲睦まじい友達など、そこにいるというわけでもない。たとえ、知っている、誰とそこにいたとしても。バンド活動にはちょうどよい場所ではないだろうか。渋谷では、誰もが気の知れた関係を望んでいるわけでもないのだから。そんなことを考えさせられていると、なんとなく海外の街のような孤独感を感じさせられてしまうような気がする、渋谷は、妙に惹きつけられる街である。


散文(批評随筆小説等) 今、何してる Copyright 番田  2021-01-07 01:17:24
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