窓がある
墨晶

 黄色い昏冥の家路

 その途上 突如

 視界に広がる路地裏は


「こんな場所に」


 学習塾兼文房具屋が

 塗装が剥がれた看板のパン屋が

 足踏みオルガンの音

 すべて他人たちの 見覚えのある時間だ


(ほら)


 線路沿いを往けば

 もうすぐわたしの住む町の駅だ


(歩いてみてください ときには)


「何故こんなに

 わたしの衣服を切り裂くのですか」

「きみにはいま 窓がある」


(だから もう逃げなくて良いんです)


 誰だ

 わたしと 霊媒 そして?


 無音の喝采がすべてを肯定する

 許された慟哭


「きみにはいま 」 
 
 


自由詩 窓がある Copyright 墨晶 2021-01-06 20:09:44
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