窓がある
墨晶
黄色い昏冥の家路
その途上 突如
視界に広がる路地裏は
「こんな場所に」
学習塾兼文房具屋が
塗装が剥がれた看板のパン屋が
足踏みオルガンの音
すべて他人たちの 見覚えのある時間だ
(ほら)
線路沿いを往けば
もうすぐわたしの住む町の駅だ
(歩いてみてください ときには)
「何故こんなに
わたしの衣服を切り裂くのですか」
「きみにはいま 窓がある」
(だから もう逃げなくて良いんです)
誰だ
わたしと 霊媒 そして?
無音の喝采がすべてを肯定する
許された慟哭
「きみにはいま 」