診察
道草次郎

ひんやりと
聴診器があたる

「生きています。
だいじょうぶ、あなたは生きています」

そう言って
次の患者をまねき入れる

「そうか、生きてるか・・・」

受付で千五百円をはらい
診療所を出る
外はもう秋の夕暮れだった

「すみません、すみません」

受付さんが息せき切って
私に紙切れを手渡した

その紙切れにはこう書かれていた

『みんな生きてなんかいません。
あれは先生の方便です。』

私はクスッと笑い
それから受付さんに軽い会釈をして
赤とんぼになった


自由詩 診察 Copyright 道草次郎 2021-01-06 10:20:04
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