おじいさん
オイタル
ぼくのおじいさん
座ったままで移動するぼくのおじいさん
落ち葉の中に 腹這って
なかなか伸びないキャベツの長さを
指で計って書き付ける
ぼくのおじいさん
秋の散歩道を彩るぼくのおじいさん
への字の口で
ぼくのおじいさんはもうはるか昔
空の縁(へり)に細かく散らばったのだが
時々こうして寂しく吹き降りてくる
ぼくのあちらこちらに吹き溜まって
胸先をまさぐっている
ぼくの臆病をなぞっている
ぼくのおじいさん
ときおり細長く滑り込むぼくのおじいさん
ときに木の根に塒を巻くぼくのおじいさん
ペン先を舐めながらぼくの卑怯を
それから納得を
手早く折り畳んでうなづく
ぼくのおじいさん
流し台の下を
川は素早く流れる
お風呂のドアが冬に抜ける
おじいさん