私立黒ヒョウ学園
やまうちあつし
黒ヒョウがやってきた
僕たちの学校に
なるほど、ネコ科らしく
足音ひとつ立てず
廊下をゆっくり歩く
生徒も教師も襟を正した
下手なことはできないよ
だってあの鋭い爪と牙
心中まで見透かされそうな眼光
不思議と誰も通報しない
警察へも保健所へも
黒い毛並みの
艶やかさに圧倒されてか
誰も皆マスクをつけて呟く
黒いものが大事
黒いものが大事
教師はより紳士的に
生徒はより物分りよく
何も問題がない
あらゆることが丸くおさまり
教育目標が成就する
そんな校舎の中を
黒ヒョウはくまなく歩き回って
やがて去ってゆく
欲するものはなかったらしい
黒いものが大事
黒いものが大事