この海の中で。
プル式
からだのなかの一本の線が
二本になる
二つに別れたぼくは
一つの体
人と同じものが見えていると思うぼくは
人と同じものが見えていないと思うぼくは
二つが線の分だけずれて重なって
うまく捉えられない
優しい言葉やこわい言葉が
洪水のようにあふれていて
ぼくは溺れそうになる
だけどぼんやりとする世界の中で
繋がれる事のない手の温かさや
たくさんの混ざり合う色たちが
輪郭もおぼろにぼくを包む
ああ、生まれてきてよかった
ああ、生まれてきてよかったと
ぼくは産声をあげる
息のできない空の下で
掴めない空に手をのばして
それでもぼくは泣き声をあげる。