この海の中で。
プル式

からだのなかの一本の線が
二本になる

二つに別れたぼくは
一つの体

人と同じものが見えていると思うぼくは
人と同じものが見えていないと思うぼくは
二つが線の分だけずれて重なって
うまく捉えられない

優しい言葉やこわい言葉が
洪水のようにあふれていて
ぼくは溺れそうになる

だけどぼんやりとする世界の中で
繋がれる事のない手の温かさや
たくさんの混ざり合う色たちが
輪郭もおぼろにぼくを包む

ああ、生まれてきてよかった
ああ、生まれてきてよかったと
ぼくは産声をあげる

息のできない空の下で
掴めない空に手をのばして
それでもぼくは泣き声をあげる。


自由詩 この海の中で。 Copyright プル式 2020-12-31 21:41:10
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