四行連詩 独吟 <静かに>の巻
塔野夏子
*四行連詩作法(木島始氏による)
1.先行四行詩の第三行目の語か句をとり、その同義語(同義句)か、あるいは反義語(反義句)を自作四行詩の第三行目に入れること。
2.先行四行詩の第四行目の語か句をとり、その語か句を、自作四行詩の第一行目に入れること。
(この1か2の規則を守って連詩がつづけられる場合、最初にえらばれた鍵となる語か句が再び用いられた場合、連詩が一回りしたとみなして、終結とし、その連詩の一回りの題名とすることができる)
夜が深まってくると
概念としてのみ存在するものたちが
静かに揺蕩う場所へ
心の核を置きにゆく
*
刺激的な電飾にふちどられ
意味を失った標たちが乱立する街を
歪なパレードが騒がしく過ぎてゆく
季節たちはとうに 逃げ去って久しい
*
銀河の端っこに浮かぶ廃墟で
何もない空を見あげひとり歌う
歌の中を進んでゆくパレードから
虹色の風船がたくさん舞いのぼる
*
花は舞い
風にさびしく花は舞い
胸のうちから
恋を消す
*
時計塔の彼方への 気高い消失
それは 重さを増してゆく黄昏が
空から剥がれ落ちてしまう前の
街の中の誰ひとり空を見上げてなかった一瞬の
*
箱船に箱庭をのせて
あてどない漂流
すべてが終わってしまった後に
くゆらす夢
*
天と地の結び目に
蒼く立つ人影
闇の深みに「始まり」を受胎し
静かに目をあげる
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