夜 天井をすり抜けて
こたきひろし

夜 寝床に入ると
眼がさえて眠れなくなる

夜 寝床に入ると
死者が会いにきたりする

夜 寝床に入ると
わたしの魂が体から抜け出して
天井をすり抜けて
死者のいるところへ昇ってしまったりする 

夜 寝床に入ると
死んだかあさん
死んだとうさん
死んだふたりの姉さん

この世界から欠けてしまった存在たちが
わたしの耳元で何やらひそひそと語りかけてきたりする

夜 寝床に入ると
わたしは永遠へと解放されていく

夜 寝床に入ると
果てしなく遠い場所から
わたしの名前をしきりに呼ぶ声が聞こえてくる

夜 寝床に入ると
やがてわたしの体は自由がきかなくなってしまう

そして
わたしのいっさいが深海の底に沈んでいく

夜 寝床に入ると


自由詩 夜 天井をすり抜けて Copyright こたきひろし 2020-12-28 23:48:55
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