暗いと不平が募り明る過ぎると戸惑いを覚える
こたきひろし

その映像と音声に長年慣れ親しんでいても
私は未だにテレビの仕組みも構造も知らない
あえて知る必要もない

おんなの体の仕組みは誰からも教わらなくても分かってしまった
なのにおんなのこころの空の色
分かっているようでいまいち掴み取れない

男の体の仕組みをおんなだって本能的に理解してしまうだろう

おんなと男の体はひとつに噛み合う構造になってる
だけど
そこから始まる物語に喝采ばかりがうまれるとはかぎらない

 他に好きな人がいてもその人とは何もなかった
 叶わない思い
 充たされなくてさびしかった
とおんなは口にした

そんなときに別の男があらわれて求愛されたと言う
 嫌いではなかったけどさ格別好きにもなれなかった
とおんなは言った
なのに男の強引さにおされて何度か会ってる内に
 男とおんなの関係になってしまいました
 そんなつもりはなかったのに一緒に暮らしだして籍も入れました
 相手の子供三人産みました 三人ともいい子に育ってくれたのに
 ダンナは酷い男でした 怖い人でした
 私はダンナに抱かれたくなくなりました
 私は拒絶したけれど何度も襲われました
 男の欲望って凄いです
 私はその内にお風呂に一ヶ月も入らなくなり歯も磨かずに髪もボサボサにしていたら
 ダンナはよって来なくなりました
 今はいっさい会話もありません 互いに他人同然です
 何度も別れようと実家に相談したり避難しようとしたけれど追い返されました
 お前の面倒なんてみられないと

それが事実か作り話かはわからない
それを確かめる必要も感じない
俺はひたすら黙って聞いてあげた
そうする事で彼女の受けた傷が多少でも癒やされるならと

冬のある日の黄昏の中である
寒気の張り詰めた外での立ち話し
だった


自由詩 暗いと不平が募り明る過ぎると戸惑いを覚える Copyright こたきひろし 2020-12-26 06:46:16
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