言ってもらえなくなること
浮蜘蛛

自分もいい年だから、仕方ない。
それは、わかってる。
前は、
お、その服新しいね、似合うじゃん、
とか。
へーそういう帽子も持ってるんだね、似合う、
とか。
何か私に、小さな変化があると、誰かに言ってもらえた。
誰かって、友達だったり、彼氏だったり、
親だったり、兄弟だったり、から。
色々な人から、気づいてもらえた。

自分もいい年だから、仕方ない。
それは、理解している。
昔は、
どしたの?そんなおっかない顔して、
とか。
なんか随分、昔と雰囲気、変わったねえ、
とか。
何か私の気持ちに乱れがあったり、
思い込み過ぎたりしていると、誰かに言ってもらえた。
暫く会っていなかった親戚とか、
恩師の先生とか、から。
それとなく、言ってもらえた。


・・・自分もいい年だから、仕方ないんだ。
それは、頭ではわかってる。

でも、やっぱり、懐かしい。
そう、思う時がある。
髪を切ると、必ずみんなから。似合うね~、とか
ちょっと切り過ぎじゃない?とか、言われた、・・・あの日々を。

やっぱり、戻りたい。
そう、思ってしまう、時が、ある。
私に、色々な事を言ってくれたみんなと、また会いたい。
わたし以外のみんなが、
現世を去り、来世へと、旅立った。

最後に、私が残った。

それは、誰かから、何かを、『言ってもらえなくなること』・・・・なんだ。

自分もいい年だから、仕方ない。
それは、心でも、わかってる。

わかっていても、
こんなに、寂しいことは、・・・・ない。

わかっていても、
こんなに、寂しいことは、・・・・・・ない。


自由詩 言ってもらえなくなること Copyright 浮蜘蛛 2020-12-21 21:01:10
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