アップルパイが嫌いだった
月夜乃海花
シナモンの香りが嫌いでした
鼻に焼き付くような君の繰り返しには
codeを揃えて万(よろず)とて愛されず
されど生き延び、辿り着いた先は
何もない焼け野原でした
焼き林檎が嫌いでした
甘すぎるような見逃せない風衝は
何もかもを忘れてencode
されど此処には、何かあると
期待した苦みだけが口に残りました
パイ生地が嫌いでした
何度も意味なく積み重ね
decode崩れ、これは厄介だ
奥に進むほど壊れる夢のように
安心したらぽろっと溢しました
アップルパイが嫌いでした
君が大好きだったそのパイが
自分が美味しいからと
無理矢理口に入れられた叱責が
窒息で殺された私には
いただきます。さようなら。
窪れた林檎の死体しか残りませんでした