妊娠
葉leaf

僕の人生と君の人生は紅葉を編むように交じり合った。僕の命と君の命は流血事件の後のように抱き合った。これまでの二項で紡がれる世紀に急襲する新しい三項目が、いま世紀を全く新しい流域へと変革していく。これからの地層に無垢な部屋を限り取り、世界中の懐疑を瞬時に跳ね返していく。世界には三つ目の中心ができて、中心をめぐる生活の軌道は混乱を増すばかりだ。

この三つ目の中心は命とも愛とも人とも呼べるが、いまだそのいずれにも到達していない清浄な流体である。水から命へ、かかわりから愛へ、胎芽から人へ、その過程を革新し続ける創造の基で、どこかですでに呼ばれていた名前のいずれとも異なる神秘的な名を持っている。いまだ呼ばれていない名前、いまだ触れられていない身体、いまだ喚び起こされない精神、それが三つ目の中心、つまり二人目の君だ。

二人目の君は一人目の君の無限の宇宙から可能性を貪欲に摂取している。ありったけの可能性を詰め込んでいっぱいになった存在が人なのだから、可能性を一生かけて消費しつくすのが人なのだから、この胎児の時期に無限に可能性を蓄えなければならない。そしていま二人目の君自身も一個の可能性として存在している。君の存在は幻影のように投射されるだけだ。

確実でない君へそれでも確実な愛と言葉を与え続けること。僕たちは既成の世界から未生の世界へとすべてのものを変換する。会話は包容に、食事は羊水に、遊技は胎動に変換して君の存在の確実さを濃くしていく。いつか生まれ出るそのことさえ定かでない君へ、それでも僕たちはありったけの定かさで、ありったけの確かさで、未生の宇宙から既成の宇宙への跳躍を、激しい出生を、見守る眼の色彩は澄み渡っている。


自由詩 妊娠 Copyright 葉leaf 2020-12-19 09:09:26
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